それでも家を買いますか?
気に入った物件が出てきた。そして薬が効かなくなってきた。
まさかこのタイミングで効かなくなるとは?
とりあえず新しい骨転移の部分は放射線が当てられるので、その治療が終わるまでは、効かなくなってきたタグリッソを飲み、そのあと薬を変えることにした。
病院帰り、一人でいることが怖くなり早めに娘の保育園に迎えに行った。
帰り道、近所のスーパーに設置された証明写真の前でなぜか思った。
「そうだ、記念写真を撮ろう!」娘にそう提案して機械の中に。
1000円札を入れ、二人で椅子に座りシャッターを切った。
二人とも満面の笑みだ。なかなかうまく笑えた。
家に帰り、おやつを食べる娘に。
「お父さん、また声が出なくなってきた。これからまた病気がどんどん悪くなるかもしれない。もしかしたら死んでしまうかも」
妻からは娘に病気のことは話しているらしいが彼女がどこまで理解しているかわからない。僕が一年近くずっと家にいる理由は病気だと理解しているようだ。
少し涙が出てきた。正直もう頭も禿げる抗がん剤の治療は辛い。ビジュアルが変わることが精神的に一番くるのである。
鼻をすする音が聞こえる。
娘を見ると泣いていた。彼女が死というものを理解しているかどうかわからないが。僕をみてただならぬ雰囲気を感じたのだろう。
「だからもっと笑おう」娘にそう伝えた「うん」
久々に娘とハグした。大きくなったな〜。
未来はどうなるかなんてわからない。
神様は運命として、悲しみや苦しみをみんなに与える。
でも僕らから笑うこと、楽しむことを決して奪うことはない。
笑って楽しもう、世の中はこんなにも面白いのだから。
「もっとたくさん笑おう」
それでも家を買いますか?
答えは、「買います」である。ここで止まってたまるか。
因みにしっかりものの奥さまのファンです。
今日は涙なくしては読めなかったです。
子どもは大人以上に感じとる力があるのでしょうね…
そう、どんな状況になったって笑うこと、楽しむこと、幸せを感じることは奪われないのだと私も思います。
ここからの選択も素敵な新居の報告も楽しみにしています。