こどもをもつがん患者でつながろう

メガネスキー

東京都 / 肺がん / ステージ4

2017-04-17 17:02:53

ガン患者、家を買う

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日記


それでも家を買いますか? 

「Yes We Can」

妻にとっては当然の答えらしい。ここまで積み上げたものを一旦なしにすることはありえない。それこそ探し始めた意味も失ってしまう。
だから僕らは進むのだ。

ということで、家探しである。
気に入った物件が出てきたが、価格はちと高い。そこで僕らはこんな作戦に出てみた。僕らが新築物件を購入するため考えた予算で、中古物件をもう一度探してみよう。予算が上がったため、より魅力的な物件が見つかるかもしれない。もしかしたら今見つかったお気に位入りの新築物件を買う決断もできるかもしれない。

2人で、パソコンやスマホを使って探してみる。やはり購入予算をあげたため、広くて住みやすそう、駅近という物件がいくつか出てきた。
「ちょっとこれ見た?」
妻が探してきた物件は、築2年東南に窓があり日当たりバッチリのマンション。しかも台所などの装備は、気に入っている新築物件とほとんど一緒。さらにいうと、買いたい新築マンションから歩いて5分といった近さだ。
「こ、これは見るべきでしょう」
「もし、気に入ったら新築マンションが値引き交渉の材料になるし、気に入らなくてもこの中古が新築マンションの値引き交渉の材料になるでしょう」

翌日不動産屋に電話しゴリ押しで内覧の予約を入れさせてもらった。なぜなら新築物件は次の日曜日に決断持ち越しにしていたからだ。予約が取れたのは前日の土曜日。実は、まだその物件は持ち主が住んでいる。
「生活感あふれる内覧ができそうだね」と妻。
内覧当日のこと不動産屋の担当者と物件前で待ち合わせ。周辺環境について話を聞く。その中で何気に入居者がこの物件を手放す理由の話に及んだ。というか聞いてみた。
「離婚です」
「・・・ですか」これは気まずい内覧になるぞ。と妻と目配せをして部屋の中へ。

気まずいながらも部屋の隅々まで着せてくれた物件の感想から言うととても使いやすそうだが、ちょっと収納が小さいかな。あと猫を飼っていてクロスの張替えが必要だ。内覧が終わり担当者と購入を検討している物件があるなど、話をしていると最後にこう提案してきた。
「100万と端数の80万は値引きします。あとはクロスの張替えや部屋のクリーニングなどのオプションで対応します。いかがでしょう」
物件価格は180万円の値引き、あとはオプション対応。と言うことは不動産屋さんへ仲介手数料として100万払うから・・・
細かいことを並べると不動産屋さんをディスてるように聞こえてしまうので(でも担当者は丁寧で正直な対応でした))
あまりお得感はないように感じた5千万前半である。
とりあえず保留!!

そして翌日、お気に位入りの新着物件である。
物件についての細かい細かい話の後、マンションギャラリーに依頼されたファイナンシャルプランナーとの相談会だ。

僕の病気のことや、僕が今年いなくなる最悪パターンや5年後のパターンなど
物件探しの前にファイナンシャルプランナーに相談はしたことなどを伝えた。
するとこう提案してきた。
ならば、奥様だけの収入でシミュレーションしましょう。
パソコンを使って診断すると・・・
「私の考えからいえば、奥様安心してください。このように大丈夫ですよ。
さらに旦那様の分が乗っかるので(例えば死亡保険や遺族年金)さらに支払いは楽になります」

「もし支払いが厳しくなったら、売ればいいんです。
 この物件立地や設備など考えると、周辺の普通の物件より資産価値は高いと思います。すぐ買い手も見つかるでしょう」

妻も安堵した顔だ。妻の不安が解消されたようだ。
詳しく、診断結果について話しているとファイナンシャルプランナーはこう続けた。
「旦那さん、最後に言わせてください。」

最後にこう続けた。
「今回購入にするにあたり、いろんなパターンをシミュレーションされています。それは当然でしょう不安ですよね。私は病気のことは詳しくわかりませんが、これだけはひとつあなたのシミュレーションに入れてください。
病気がよくなった未来。明るい未来もその中に入れるべきだと私は思います」
「はい〜」すっとんきょうで変な返事が出てしまった。

びっくりした。なんてことを言うんだ。
僕は、ガンとわかった時はステージ4最終ステージだ。だから病気がよくなるなんて考えたことがなかった。こんな状況だからその中の最善策。出発点が違うのである。全ての行動はマイナスから発せられる行動。周りから見るとそれでも前向きに捉えて生きているように見えるかもしれない。
今回の家探しだってそうだ。マイナスからのスタートだった。
「病気のない、明るい未来」
ガンガ発覚して4年近く常に不安から始まる思考で僕は生きていたのだ。
その中には明るい未来という選択肢はなかった。むしろそう考えることが許されないかのように。

じっと手を見た。そこには僕がここ数年どのように生きてきたか記されたようなシワがある。その中に明るい未来の入る余地があるのか、いや入れるべきでる。深いシワとして刻み込まれるべきなのだ。



結果をいうと、中古物件を含めた交渉もあり値引きができた。決算期という時期も味方をしてくれ、それは少し驚くような額だ。結局「ガン患者、家を買った」のだ。しかし正確にいうと「ガン患者の妻、家を買う」だ。


購入を決めたこの日の帰り、少し混んできた電車の中で楽しそうに笑う子供を見ながら涙が出てきた。
そして眠っている娘の顔、いつも支えてくれる妻の顔を見る。
これからは明るい未来も見てみよう。
新しい治療がまた始まる。できれば明るい未来に辿り着けるように。

  • hiro

    ファイナンシャルプランナーの方の言葉
    凄く素敵ですね!
    本当その通りです。
    治って明るい未来も持っていきましょう!
    ステージ4
    確かに最終ステージで明るい未来なんかないって、私も時々思います。

    でもその度にそばにいてくれる、子供や、彼に勇気をもらってます。

    絶対に明るい未来来ることを信じましょ!

    新しいお家で笑顔をの溢れる明るい未来を信じて

    2017-04-17 17:15:34

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  • ellie

    メガネスキーさん
    なんて素敵な結末…いえ、ここから新しい未来が拓けるんですね。
    家以上に素晴らしいものを手に入れられたんじゃないでしょうか…
    私も胸が熱くなりました。
    これから新しいお家での生活楽しみですね。新居の様子もぜひアップしてくださいね。

    2017-04-17 18:23:03

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  • ミー

    え!途中のままの投稿とは思えない、続きがワクワクするお話でした。
    そうですね。これから、深く、深く、シワを刻みましょう。ご家族を応援しています。

    2017-04-17 19:34:06

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  • コダック

    購入の決定、おめでとうございます。
    ファイナンシャルプランナーさんは、素晴らしいこと言ってくれますね。
    私も自宅を購入した時は、担当の営業さんを気に入り、購入を決めました。
    こういうのも「人の縁」だと思います。
    明るい未来への第一歩ですね。
    たどり着ける様に頑張りましょう!

    2017-04-17 23:10:15

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  • さくら

    ご購入おめでとうございます
    これからの楽しみが増えますね
    ---
    「旦那さん、最後に言わせてください。」
    で終わっていた前回の投稿は
    なんて、凄い引っ張り方だ!
    次回が楽しみだな(^-^)
    って思ってました(^_^;)

    2017-04-18 05:23:37

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  • スミレ

    結局、新築マンションを購入したんですよね!

    すごい粘り勝ちですね。
    おめでとうございます。

    オプションとかはどうなさるのでしょうか?
    これからも連載を楽しみにしています。

    私もモデルルーム見学を始めて、今の自宅の近くのマンション購入を検討中です。

    2017-04-20 18:44:44

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