こどもをもつがん患者でつながろう

花木裕介

千葉県 / 中咽頭がん / ステージ4

2020-05-08 10:13:59

「トランジション・マネジメント」とがん罹患者のキャリア再構築との関係性

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日記

ブログ記事『「トランジション・マネジメント」とがん罹患者のキャリア再構築との関係性』書きました。よろしければご一読ください。

https://ameblo.jp/hanaki-yuusuke/entry-12595492797.html

(以下、本文転載)
こんにちは、がんチャレンジャーの花木裕介です。

コロナウィルスの影響により、がん治療〜そして復職からコツコツと積み重ねてきたがんサバイバー講師としての活動ができなくなりました。

約1年半、自分の中では、キャリアの再構築の一環として取り組んできたつもりですが、今、まさに再々構築を迫られています。

とはいえ、嘆いていても仕方がないので、まずはこの1年半を振り返ってみようと思い、それにあたって、参考になる書籍がありましたので、皆さんにもご紹介します。

『グローバルリーダーのための「トランジション・マネジメント」』(馬場久美子著・ダイヤモンド社)

著者の馬場さんは、私が前々職でコーチングの会社にいたときの同志で、がん治療中にキャンサーペアレンツを紹介してくれた恩人でもあります。

キャンサーペアレンツ代表の西口さんと以前同じ職場にいらっしゃったご縁から、独立された今、キャンサーペアレンツの事業支援もしていらっしゃいます。

そんな馬場さんと、先日ZOOMミーティングで、本書の内容のことも含めていろいろとお話しさせていただきました。



本書は、海外駐在員の方が、異文化環境に適応していく過程であるトランジション、すなわち「移行」を、いかにうまく進めていくかを解説した、グローバルリーダーのための一冊です。

しかし、私が読み進めていく上で、これは私たちがん罹患者にも当てはまるところがたくさんあると感じました。

特に、グローバルリーダーが、現地に着任し、さまざまな経験を積んだ後に帰任してくるとき(書籍の中では「逆カルチャーショック期」と示しています)、これがまさに、がん罹患者が治療を終え復職してくるときに近い状況なのではないかと思ったのです。

例えば私の場合、9ヶ月のがん治療の後復職しました。復職後は、「自分の経験を活かしたい」というモチベーションを抱きつつも、休職期間中に勤務先の状況は大きく変化しており、そのキャッチアップと自らの居場所づくりに苦心しました。特に、自分のパフォーマンス自体も大きく低下していたため、同じ勤務先ながらまったく別の人材になってしまったようなショックを受けました。

このような時期のことについて、本書では、逆カルチャーショック期の箇所で以下のように触れており、自分の1年半に重ね合わせて読みました。

私が特に印象的だった箇所をご紹介しますね。

◆◆◆

・実際には自分の予想や期待が次々に外れていきます。その過程で、多くの帰任者は、だんだんと所属している組織や仕事内容に対して、「こんなはずではない」と批判的な意味付けをし始める傾向があります。予期せぬカルチャーショックに対する自然な防衛反応として、現状を批判せずにはいられない、ということだと思われます。

・そのカルチャーショックの内実は、次のようなものです。

「ここでは、自分は必要とされていないのではないか」
「自分は競争から取り残されてしまったのではないか」
「自分の経験をもっと活かせる場所が他にあるのではないか」

このような考えが帰任者の脳裏に浮かぶようになります。この予期せぬカルチャーショックは、帰任者にとっての、大きな落とし穴であると言えます。
駐在員は「帰任」するわけですが、実際には私たちは、元の時間や場所に「帰る」ということはないのです。

・前出の桐原さんは、こんな風に表現されていました。
「キャリアというのは、『川の流れ』のようなものなのだと思います。川は、常に流れているので、たとえ同じ川の同じ場所に飛び込んだとしても、タイミングが違えば、そこはすでに違う川です。『まったく同じところに戻る』ということは決してありません(以下略)」

・人は誰しもさまざまなマイノリティ性を持っています。海外からの帰任者も、そのうちのひとつです。そして、どのようなマイノリティ性にも、必ずALLY(協力者)は存在するであろうと私は考えました。海外からの帰任者にとってのALLYも、あなたの周囲に必ずいるでしょう。私は帰任者の方には、ぜひALLYを意識的に探してみていただきたいと思っています。

・逆カルチャーショックのプロセスで、葛藤を乗り越え、あなたにとっての新たな「物語」を描き直すことは、「自分との対話」と「他者との対話」を通してしか成しえません。そして、そのプロセス次第では、見えてくる「物語」はたったひとつではないことを覚えていてください。

◇伝えられていない周囲からの期待
◇経験を活かせるチャンス
◇全く新しいミッションの可能性
◇まだ手つかずの成長課題
◇ここから始まる新しいキャリアステージ

そこには、あなたがどれだけ広い視野を持って、どれだけ多くの人と対話を創り出していけるか、というチャレンジがあります。いくつもの対話を通じて、新たな「物語」を見いだせた時、初めて私たちの異文化環境での経験や視野が、組織にとってもあなたにとっても、次のステージへつながっていくのです。


『グローバルリーダーのための「トランジション・マネジメント」』(馬場久美子著・ダイヤモンド社)

◆◆◆

いかがでしょうか。

自分自身に照らし合わせてみると、「そういえば、治療前に比べて、多くの協力者とより多くの対話をしていたなー」と気づかされます。

もともと私は内向的な性格なので「自分との対話」はよくしていましたが、恐らく自分の経験を活かして新たなキャリアを構築していくために、と意識的に他者との対話も求めていたのではないかなと。

今、まさに復職やキャリアの再構築をしている方に、ぜひ読んでいただきたいですね。

最後に、私が勇気をもらった一文を、本書から借りてご紹介します。

「私は、トランジション期にしか存在しえない葛藤や混乱こそが、トランジション期の成功のサインと言えるのではないかと思います」

(了)


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